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なぜ、書く前に“聞く”のか
アンケートやヒアリングシートでは出てこないものが、対話では出る。整える前の生の言葉に、その人らしさは宿ります。取材で自分が大事にしていることを、実感から書きました。
文章を書く仕事なのに、自分は書くより前に、たくさん時間をかけていることがあります。それが「聞く」ことです。
書き始める前に、じっくり話を聞く。ここに一番の力を入れています。なぜそこまでするのか、今日はその理由を書きます。
シートに書いてもらうと、言葉が整いすぎる
最初に、やらない方法の話をします。アンケートやヒアリングシートを渡して、書いて返してもらう。これは、自分はほとんど使いません。
理由は単純で、文字にしようとすると、人は言葉を整えてしまうからです。書く時間があると、無難な言い回しを選んでしまう。角を丸めて、きれいにまとめてしまう。
その整った言葉は読みやすいけれど、その人らしさが抜けています。誰が書いても同じような、当たり障りのない文章になる。一番おもしろい部分が、整える過程でこぼれ落ちてしまうんです。
話してもらうと、整う前の言葉が出る
だから自分は、口で話してもらいます。目の前で、その場で思いついた順に喋ってもらう。
話し言葉には、整える時間がありません。言い直しも脱線も詰まりも、そのまま出ます。この整っていない状態にこそ、その人の温度が残っています。
「うまく言えないんですけど」の後に続く言葉が、たいてい一番おもしろい。きれいに言えないから、本当のことを探しながら喋る。その探している感じごと、自分は受け取りたいと思っています。
沈黙の3秒を、待つ
聞く時に気をつけているのは、間を怖がらないことです。質問して、相手が黙る。この3秒を、自分は待ちます。
沈黙は、考えている時間です。ここで焦って次の質問を重ねると、相手は考えるのをやめてしまう。せっかく深いところに潜りかけていたのに、水面に引き戻してしまうんです。
黙っている数秒のあとに出てくる言葉は、用意していた答えではありません。その場で掘り当てた、本人も少し驚くような一言だったりします。待つだけで、話の深さが変わります。
台本は、捨てるために作る
質問リストは、事前にちゃんと作ります。ただ、それは本番で読み上げるためではありません。用意した質問は、たいてい途中で捨てます。
話を聞いていると、思ってもみなかった方向に話が転がります。その脱線こそ、聞きたかったものだったりする。台本通りに進めようとすると、その一番おいしい脱線を、自分でつぶしてしまう。
だから台本は、道に迷わないための地図として持っておく。でも、目の前の人がおもしろい脇道に入ったら、迷わずついていく。準備は、その場で自由に動くためにしています。
自分のことは、自分が一番見えない
なぜ、わざわざ人に聞いてもらう必要があるのか。それは、自分のことが自分では一番見えないからです。
毎日やっていることは、当たり前になりすぎて、強みだと気づけません。「こんなの誰でもやってますよ」と言う人ほど、実はすごいことをやっている。本人にとっては空気みたいなものなので、言葉にできないんです。
外の耳が価値を持つのは、ここです。話を聞いて、「もう少し詳しく」と掘る。当たり前だと思っていたことに、聞き手が驚いてみせる。そうやって、自分では見えない強みを、外から引き出していきます。
この「聞いて・引き出して・形にする」という流れは、サービスのページにまとめています。士業の先生に向けては、士業の方へのご案内でも書きました。書く前に聞くことの意味が伝わっていたら、嬉しいです。
― しみっち
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